今回のメディカルチェックは山王整形外科勤務の理学療法士『瀬戸 新(せと あらた)』氏のもと、理学療法士4名と学生7名(秋田大学医学部サッカー部の医学科3名・理学療法士学専攻3名、秋田大学ハンドボール部トレーナー1名)の計11名のスタッフにより実施。専門職の手により、選手たちの身体特性について詳細に把握する本格的なメディカルチェックを行った。
測定項目
A:柔軟性テスト:関節可動域測定(股関節、膝関節) 形態測定:足部アライメント
B:タイトネステスト: 弛緩性テスト:東大式全身弛緩性テスト
C:筋力テスト:等尺性最大収縮テスト(股関節・膝関節)
D:バランステスト: Star Excursion Balance Test 、 閉眼片脚立位保持時間
E:動作能力テスト:Functional Movement Screen(FMS)
目的
• 対象の身体的特徴を正確に把握する
• パフォーマンスアップに活かす
• スポーツ傷害の発生予防に活かす
「ケガをしたら治せばいい」のではなく、「ケガをした時点で上達が大幅に遅れてしまう」と認識することが重要。ASP-ACADEMYでは、選手の上達機会のロスを未然に防ぐために『メディカルチェック』を行う事とした。育成年代最初のカテゴリーであるジュニア期からメディカルチェックを行うことで、選手のケア意識に働きかけていく。
「柔軟性テスト・形態測定」
足部アライメント
足の形をチェックします。 足の形が崩れていると(偏平足、開帳足、凹足)走行時やジャン プ時に悪影響を及ぼし、数値の低下や疼痛の発生を引き起こします。
関節可動域測定
身体の柔軟性をチェックします。 身体が硬い=ケガをしやすいというイメージはもちろん正しいうえに、十分な柔軟性を持つことはプレーの幅を広げます(インターセプトしやすい、 もう一歩が届く、シザースなどを仕掛ける距離が伸びるなど)
「タイトネステスト・弛緩性テスト」
タイトネステスト
柔軟性と重複する部分もありますが、複合的な身体の硬さをチェックし ます。柔軟性同様、これらのテストが陽性になることで傷害発生リスクが 高まります。
タイトネステスト
柔軟性と重複する部分もありますが、複合的な身体の硬さをチェックし ます。柔軟性同様、これらのテストが陽性になることで傷害発生リスクが 高まります。
「筋力テスト」
筋力テスト
強いボールを蹴る、当たりに負けない、高く跳ぶ、これらを突き詰めていくと筋力の問題は避けては通れません。児童期とはいえ身体を支えるだけの十分な筋力があるかどうかをチェックすることは重要です。
「バランステスト」
Modified Star Excursion Balance Test (mSEBT)
サッカーをする上で、片足で立ち、もう一方の足を上手に使うという事はなくてはならないスキルです。 また、サッカー選手に最も多く発生する「足関節捻挫」の評価・予防のためには、こういったテストの実施が非常に重要になります。
閉眼片脚立位保持時間
先ほどのテスト同様、片足立ちでバランスをとるという能力を理解し、養うことは非常に大切です。このテストでは、目を閉じる=視覚情報を遮断した状態を評価することにより、より純粋に軸足の感覚の鋭敏さを知ることができます。
「動作能力テスト」
Functional Movement Screen (FMS)
これまで紹介してきたテストは選手の身体能力のそれぞれの要素を取り出して評価するものでした。一方このテストは、そういった様々な要素を総合的に発揮して動作を行うことでその質(筋力はあるが硬くて動けない、柔らかいがバランスが悪く定まらない、バランスは良いが筋力がなくキレがない等)を評価するテストです。これはリヴァプールFCやFC東京などでも実施されている評価で、プロ選手もこのテストの数値を参考にしてトレーニングを行っています。
メディカルチェックの開催意義
私たちは、サッカーが上手くなる上で重要な事が大きく分けて3つあると考えています。
①自分の身体をよく知ること
②個々の特徴に合った練習をすること
③ケガをしないこと
まずサッカーをする為にはサッカーの技術よりも先に健康な身体が必要になります。自分の身体の状況を良く知ることで、練習内容だけでなく栄養や睡眠、生活習慣など様々な点について見直す機会になります。
また、サッカーはチームの戦術やポディション、自分の希望等により要求されるプレーが異なり、そのプレーを実現する為に必要な練習も異なってきます。しかし、選手の身体能力やスキルに違いがあれば、選択される練習内容も異なってきます。つまり目指すべきプレーを実現する為には自分の身体能力を知ることが重要なのです。
更に近年では、選手の傷害発生率の高低によってチームの勝率が改善することや、多大なる経済的損失をもたらすことなど、ケガによる様々な要素が報告されています。「ケガをしたら治せばいい」のではなく、「ケガをした時点で上達が大幅に遅れてしまう」と認識することが重要です。
こうしたことを良く理解する為にフィジカルチェックとメディカルチェックの2つを行うことが一般的ですが、本チェックはメディカルチェックの部分を担います。本チェック項目の中には、イングランドのリヴァプールFCやJ1リーグのFC東京などのトッププロが実際に実施しているものも含まれており、医科学的に信頼性のあるテストによって身体機能を数値化することができると考えています。
それにより、みなさんがより安全に、より効果的に練習することをサポートし、より楽しくサッカーをすることを手助けできればとも考えています。選手、保護者、指導者、そして私たち全員が一緒になって選手の身体について考える有意義な機会に出来れば幸いです。
メディカルチェック実施にあたってご協力頂いた瀬戸 新 (せと あらた)氏を紹介
略歴:1989年生まれ、長野県出身、理学療法士、秋田大学医学部保健学科理学療法学専攻を卒業後、医療法人圭山会山王整形外科医院に入職。入職と同時に秋田大学医学部サッカー部トレーナーとしてスポーツ現場での活動を開始する。その後、U12年代からシニア年代の多岐にわたるサッカー現場でトレーナー業務にあたる。現在は秋田県理学療法士会スポーツ・パラスポーツ理学療法研究班班長、秋田県サッカー協会医学委員などの立場で、秋田県内のサッカー選手の傷害予防、パフォーマンスアップのために活動中。自身も小学4年生時から現在までサッカーに親しんでいる。
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