JFA第44回 全日本U-12サッカー選手権大会(2020年度) レポート「秋田の育成の現在地は?」

ASP-Newsvol2

秋田でサッカーに従事するほとんどの方が自チームの勝敗やどこが優勝したかくらいまでで興味や情報がクローズされているかもしれません。中にはネットなどを通じて秋田の代表が全国でどうなったか、スコアくらいは追いかけているよという方もいらっしゃるかもしれません。

全少全国大会。現在はJFA第44回全日本U-12サッカー選手権大会と少し名称を変え、鹿児島を舞台に12月に開催されています。ここで起こっている事、秋田のジュニア年代の現在地などのリアルは出場し現地に足を運んだ者しか肌感覚として感じる事が出来ません。

全国のトップとはどんなレベルなのか、トップとのサッカーの相違はどれ程なのか。今年も秋田県大会を勝ち抜いたチームが各県に割り振られた出場権の1枠を行使して全国大会に出場しました。全国大会、そこで何が起こっているか。秋田のサッカーの現在地をお伝えします。

どこを見る?育成結果検証の検体は

高校サッカー選手権大会において13年連続初戦敗退。これもまた秋田の現在地を示す1つのアイコン的事象だが、2018年に秋田商業が14年ぶりの1回戦突破、その後ベスト8に入り県内が歓喜に包まれたのはまだ記憶に新しい。

野球の金足農業が全国準優勝した歓喜の余韻も残る中「今度はサッカーが!」ということで明るいニュースとなった。

しかしながら、昨今、高校サッカーの勝敗はその地域の育成のレベルを示す指標としては正直使えない。何故なら、高校サッカーは地域の選手たちの成長とレベルを競う大会ではなく、選手を集める仕組みを競う大会となっているからだ。

今回の選手権を優勝した山梨学院、準優勝の青森山田を筆頭に、強豪校のリストを見れば一目瞭然で、ジュニアユース年代の出身チームは県外比率が高い。

これまで視察で訪問した各県の育成指導者の話を聞いていても、県内の選手が地元の強豪校で活躍出来るのはほんの一握りで、足を運んだ先々でその状況をため息交じりに話されていた。

高校サッカーは今や全国のありとあらゆる地域から越境入学する大量の移動が当たり前となっており、地元選手のみで構成されているケースは少ない。躍進した18年の秋田商業にしても軸を東京や九州の選手が占めたし、現在J下部選手が多く所属している明桜高校は早速今大会で27年ぶりの全国大会出場を決め、選手を獲得するオフザピッチのマネジメント力を結果に繋げた。

どのくらい良い選手を集められるかを競っているという表現は何も大げさでは無く関東や関西であれば特にその傾向は強い。近隣県との行き来がジュニア、ジュニアユース期から定着しているし、選手の行き来の情報交換も密。スカウティング、そして高校と中学の連携で下部組織を持つなど県外選手の獲得だけでなく地元選手の発掘と育成にも余念がない。その学校が存在するホームタウンとして県代表としての権利を有するが、選手構成が地元選手のみで活躍するケースが減ってきた。

県外選手を多く集めて上位に進んだとしてそれで「秋田のレベルが上がってきた」などと間違っても勘違いしてはならないし、各年代の正しい情報を掴み、全体を捉えた中で携わるその年代を捉えていく必要があると思う。

全国の舞台で起こっているリアル

ジュニアからだいぶ逸れて項を割き、何を言わんとしているかというと、結果を追求する傾向が強まり、スカウティングが強化される高校・中学年代の状況からして、地元選手達のレベルと育成状況を正にジャッジ出来る検体としてはこのジュニア年代の結果と内容しかないという事。

筆者もこれまで全国大会を現在の鹿児島開催、その前の静岡開催と4回、他にもワールドチャレンジを3回と、この10年ほどの期間ほぼ毎年そうした大会に足を運び、全国や世界のジュニア年代のトップを実際に見て自分の中に指標=モノサシを作ってきた。

人は熱し易く冷め易いし記憶はすぐに薄れる。ギターだって弦のチューニングが必要だし車だって定期的なメンテナンスが必要。サッカーで言う「どのくらい」という指標を再確認する機会が定期的に必要だ。毎年最低1回はジュニアのトップを確認する作業を設けなければ記憶や熱量の維持継続、知識や指標のアップデートは出来ない。

改めて感じた全国との2学年差

全国大会がまだ静岡開催だった頃の自身1回目の視察で感じた全国と秋田の選手達との力関係を当時「2学年差」と形容し秋田の指導現場に持ち帰った。それから月日が流れ、数年の取り組みの蓄積を持って今回の全国大会を改めて現地で確認し、今度は日頃教えている選手達のパフォーマンスを通じて比較する中で改めてこの全国との差を再認識する事となった。

秋田での日常がいかに緩いか。指導、対戦相手、あらゆるレベルにおいて比較にならない程の差が存在している事。勝敗や数字だけではもちろん伝わらないし、ネット配信でゲームを見たとしても現地で感じられる肌感覚の絶望感には程遠い。

1本のパスにしてもパススピードやその飛距離に対する正確性などどれだけ難易度が高いか。映像では当たり前に見えるそれらの現実的難易度は映像では伝わらない。現地で確認するより他無い。

今回、飯島南が出場した全国大会での結果は掲載の通りだが、結果だけを見て様々な感想を述べられる方が居る事と思うが、飯南の戦い方やレベルがどうこうという話ではない。秋田を代表して出場したチームがこの結果だった、我々オール秋田の結果として捉えなければならない。

県大会、堅守速攻の飯島南の牙城を秋田の他のチームは崩せなかった。その堅守飯南は全国で3戦2桁失点を喫して一勝も出来なかった。

また同じ頃、福島県のJヴィレッジにて開催されていた全少の裏選手権となったジュニアワールドチャレンジ=ワーチャレ(今大会は国内チームのみの出場)でも、同じく秋田のブラウブリッツ秋田U12が出場したが、全国出場が叶わなかった強豪が集う同大会において3戦3敗8失点で予選敗退した。

こうした結果を見ても秋田の別のチームが出場したからといって内容や結果が変わる事はないし秋田を代表して出場したチームの結果は秋田全体が受け止めるべき結果だという事が言える。

そして何より、秋田代表の全国での戦いは組み合わせの妙により1勝したり1分けしたという事はあっても、全国における位置関係は何十年もずっと変わっていない。まずはこの点を問題提起しなければならない。

ジュニアのレベルが上がらなければ次のジュニアユース年代、ユース年代で戦えるチーム、選手は出てこないし、プロサッカー選手が出てくるのも、応援する地元チームが活躍すのも何十年に1回の確率を待つ神頼み。

現状は秋田のチームの躍進が奇跡的な確率の事象であるから野球の金農やサッカーの商業躍進のようなケースが起こると大いに盛り上がるのだが、そうしたステージに高い頻度で進んでいる県やチームが沢山ある事を考えれば、これでいいのかと疑問を感じる。

J2ファジアーノ岡山戦。全国初戦というシチュエーションの中でゲームにフィットできず心と身体のバランスを崩した状態で先に失点を喫しパニックに。

レベルの高い相手に振り回され、息が上がり、トラップはすり抜け、守備選手は抵抗なく抜かれ、キャッチしたと思ったボールは抜け、まるでピッチに選手が存在しないかのようにそれぞれのプレーを表現出来なかった。

2試合目のJ2アルビレックス新潟戦はようやく少し動きが出てきたものの、やはりレベル差は大きい。相手のビルドアップが後方3分の1こそ精度が高く自信に満ちていたが、3分の2からのクオリティが不足していた事でワンサイドゲームにはならず幾分守備で手ごたえを感じられるように。

その後3試合目でようやくの勝ち点1ゲット。ここでも相手との実力差は存在していたが、しかしながらその実力差がようやく「攻められながらの飯南ペース」と言える実力差範囲内に。GK牧野を中心とした秋田でのようなふてぶてしい堅守なゲームを発揮し最後の最後で勝ち点1をもぎ取った。

2ページ目:広がる全国との格差、蓄積されない経験。

NPO法人秋田スポーツPLUS

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