決勝戦レポート 第44回全日本U-12サッカー選手権大会秋田県大会
秋田のジュニア年代における全県レベルの重要大会と言えばトヨタジュニアカップ、バーモントカップ、魁星旗、全日本。中でもこの全日本は全国大会へ繋がる真のNo.1を決めるジュニア年代最高峰の大会であり「小6の最後の全日本で優勝して全国大会に出たい!」こうしたモチベーションで日々ボールを追いかけるサッカー少年が大多数と言える。
コロナウイルス感染症の影響によりこれまで経験したことのない日常生活を送ってきた2020年はサッカーカレンダーにも大きな影響を及ぼし、各種大会の中止・延期、そして各チームの活動停止や県外などの行き来も自粛され、ジュニア年代のサッカーにおいてはチームとしてのサッカーの構築やレベルアップは例年になく難しいシーズンだったと言って間違いない。
そんな中、この全日本少年サッカー大会の決勝に進んできた飯島南FC仁井田レッドスターズはコロナ禍を迎える前に行われた昨年秋の新人戦、トヨタジュニアカップの準決勝で一度対戦しているカード。飯島南FCとしてはそこで敗れ3位決定戦にまわるなど悔しい思いをした因縁の相手。トヨジュニ、魁星旗、全日本と、優勝候補にも競り勝ち、直近の魁星旗も制している飯島南としてはこの仁井田レッドスターズも破る事が出来れば、昨年の借りを返す事が出来るのと同時に名実共に真のチャンピョンとして全国の舞台に乗り込める。そんな位置付けの決勝戦だった。
チーム力を象徴する全員守備
戦前の予想通り、堅守速攻を武器とする飯島南がしぶとく守り、仁井田がエースでキャプテンの永澤を中心とした攻撃でゴールに迫る展開。
しかしながら、決定的なシュートシーンとなると仁井田・永澤が何度か放った際どいシュートが数本で他はバイタルエリアまでは近づいても飯島南の守護神GK牧野を脅かすにはいたらない。前線のアタッカーがドリブルなどで持ち込むも単独の突破となると飯南の守備は厚く攻略が難しい。
しかしながら飯島南の守備が必ずしも鉄壁かと言えば、決してそうでもなく、局面ごとに切り取って見れば仁井田が上回り、打開している場面も多くあった。しかし、2枚~3枚と配したDFにワイドの選手もカバーに下りてくる厚い守備を敷いたリスクマネジメントはピッチの横幅を4~5名で守る守備で、なかなか崩せるものではない。
ファインセーブを連発するGK牧野に辿り着く以前に、見えないところで重要な働きをしているDFリーダー佐藤の高い身体能力と危機察知によりこのチャレンジ&カバーの繰り返しが行われていた。この守備エリアにおける約束事や状況に応じたそれぞれのポディショニングなどは、コロナ禍でなかなか強化や経験の蓄積が進まなかった各チームにあって、上級生がほとんどいない事で4年生の頃から同じメンバーで上級生を相手に戦ってきた数年の強化の積み上げがここに活きていると感じる。
数的優位で厚く守り、更に状況に応じ経験則から臨機応変に守れる。堅いというよりも経験とチームワークから守備における結果を作っている印象。そんな守備網をなんとかくぐり抜け、ベストショットを放っても、普通は入るはずのシュートが入らない。誰もが認める今年のベストGK・牧野が最後の砦としてゴールマウスに立つ為、接戦やPKなどにも強い。これが今年の飯南の強さではないだろうか。単独のドリブルだけでは1人~2人を抜いても決定機までには辿り着けない。間にコンビネーションを入れ、グループでの局面打開があればチャンスを生み出せたと感じる。
スコア通りの拮抗した好ゲーム
惜しくも優勝を逃した仁井田レッドスターズだったが、スコアの通りどちらが優勝してもおかしくない拮抗したゲームだった。GKは常に安定していて長い距離のフィードも素晴らしく、DFの選手もサイドの1vs1など守備局面において常にタフなプレーを見せ、失点を許さない。
アタッカー同士の接続がやや希薄ではあったが、1人1人のドリブル打開などスキルの高さは随所に見られ、特にエースの永澤はドリブル打開、スルーパス際どいシュートなど、ボールを持つだけでワクワクさせられるようなオンリーワンの活躍を見せ会場を何度も沸かせた。
コロナ禍で求められた 経験値
今年も例に漏れずシンプルでハードな決勝戦だった。GKからのキックが空中を行き交い、大きなプレーが求められるのは全県大会でも全国大会でも例年同じ傾向。その接続に求められるのがしっかりと落下地点を見極めボールを収められるか。臆することなくしっかり競れるか否か。8人制ゲーム規格の走力、強いボールや長いボールを狙った所へしっかりと送り、そのボールを正確に止める。
止める・蹴る・走るを正しい判断の中で発揮出来るか、ここにに尽きる。特にこうした最終学年の全県上位の試合となるとサッカーが非常にシンプルでフィジカルやスピードやパワーが求められるタフなゲームになる。
日頃の練習の成果をしっかりと発揮するという意味でも試合経験のが大きなポイントとなるわけだが、例年であれば春先から強化日程の質と量でアドバンテージを持つ強豪チームが今年に限ってはここで差異を作れなかった。その点においても同じ仲間で数年の蓄積を持つ飯島南が優位性を持って戦えた今シーズンだったのではないだろうか。
コメント