6月下旬~7月中旬にかけてはお引き合わせ頂いた様々な企業、施設を訪問し各関係者様と現場で、ZOOMでと、盛り打ち合わせを行っている時期でした。
ある時は人工芝のサンプルを前に腕組み、ある時は訪問した社屋の屋上に上がらせて頂き、もしかすれば本当に来年あたりに夢にまで見た施設が誕生するかもしれない、そんな感触を持ちながら走り回っていたところでしたが、まさかまさかでした。1週ごとに変化するこの件の進捗に、本原稿も当初の内容から修正に修正を重ねることに。そうです、みん体に続く民間施設、「みんなのグラウンド(仮)」一事例目の誕生です!
指導歴24年、変わらぬ地域課題
秋田のスポーツ環境の問題については自分が指導者を始めた24年前から課題を感じていました。
雨などの悪天候はもちろん特に課題に感じていたのは冬期間の屋内施設の確保が難しい事。思い当たる公共施設を1つずつあたり、手を尽くしてもなかなか状況は改善されず「自前の体育館が出来たらいいな」と願うだけで当時は何もアクションを起こせませんでした。
周りには「足を運ぶ」「聞いてみる」「頭を下げて頼んでみる」など、動く大人は皆無で、状況が改善しない事や自身が動かない事を正当化するかのように「雪の上でのサッカーは足腰が鍛えられる」「サッカーは雨の試合もある」などなど、やらない理由を列挙する場面によく出くわしました。
酒席では「俺が宝くじ当たれば体育館や芝のグラウンド作るぞ」こんなフレーズを至る所で聞きましたが、正直、目の前の小さな問題にも行動を起こせない人は宝くじが当たっても自分のこと以外に使わないだろうなと冷ややかに聞いていました。
動き出した5年前、まずは動く事
時が経ち、自身の立ち上げたスクールへと舞台が移ると、次第に課題解決の手法が変化していきます。
様々な繋がりの中で提案の持っていき方を学んだり、どこを通すかなど入口の選定によって施設確保が叶う事例が出始めました。地域に今ある既存の施設の利用を強化し施設確保や課題改善にシフトしていった形です。当時、市内に7つのU9~6スクール、更には9歳以下の選抜クラスにアカデミー、潟上も含め10のカテゴリーを有していた中、それら全てを実施出来たのはそこの調整があってこそでした。
しかしその中でも現有の公共施設の老朽化や取り壊し、あるいは使用ルールの変更や外的要因による使用不可の事例も出始めたことで、民間型の施設の必要性を強く感じるようになります。指導者を始めた当初から民間スポーツ施設の創出は絶対に必要であると考えていた為、屋内施設・グラウンドの創出という目標に向けた活動は続けていました。
見える形で具体的に動いたのは2015年。主に広大な敷地を有する企業、エネルギー関係の会社や、屋内倉庫を複数有する会社などを1件1件訪問し、現状の秋田の課題についてまとめたプレゼン資料を持って交渉を行いました。
今見返すとだいぶ出来の悪い資料で、企業側へのメリットやイメージを描ける提案が何一つない内容ですが、どれだけ秋田のスポーツ現場が劣悪な環境であるか、施設利用にあたっての理不尽さや他県との差異など指導歴24年、変わらぬ地域課題青臭いながらも刺さる内容で、今自分で見返しても資料全体から怒りにも似たエネルギーを強く感じます。
それから5年後、自分は何の力も発揮していませんが、結果的にみんなの体育館やばせという民間のチカラで創出された体育館が生まれました。言うなれば願い続けた先に誕生した体育館。自分が作ったわけでもない、交渉をまとめたわけでもお金を出したわけでもない、作って頂いた体育館。けれど、チームを指導していた当時、プレゼン資料を作って動き出した5年前、絶対に考えられなかった民間のスポーツ施設が秋田市に1個出来たという意味で1つ願いが叶いました。
個人的にもそれまで3度、屋内倉庫で進みかけた案件がありましたがいずれもとん挫。法人としての体力が無い為、あらゆる部分で他者頼み。発案し、声は上げるが一番力が無いというこの立ち位置であることに非常に悔しさとストレスがありました。
ただ、目的は子供達のスポーツ環境を整える事。いつでも思う存分に好きなスポーツを年中続けられる環境を整えてあげる事です。自分が全て交渉してお金を出して「作ったぜ」と言えればヒーローだし最高なのですが、子供達に提供するという目的を果たせるならば自分のそんな自尊心など不要だし、結果的に思いが形になるならばそれはそれで自分の中では「1つ叶えた」とカウントできる。
現在は目的遂行だけを考え動いています。もっと掘り下げて言うと自分がこれまでに見てきたブラジルやスペインやアイスランドなどの日常におけるスポーツ文化、その光景が目指すべきビジョンとして脳裏にしっかりと焼き付けられていて、そこを思い描いて活動しています。
17の夏から指導者としてスタートし、24年経過した今も尚、課題として存在し続けるスポーツ環境の問題。県全体の各種競技の競技力低下や場所を失い路頭に迷うスポーツ難民。スポーツを通じた健康や心の成長、そこから枝分かれして寄与していく秋田の発展という意味においてはこれまでずっと課題としてあり続けたこうした課題に対して何もしてこなかった大人の責任は重いと思います。
5年前の提案書には「1年間の中で11月から3月までの4ヶ月がオフシーズン。これが小学生の3年間で4ヶ月×3=1年、中学・高校と合計すると学生時代に3年間ビハインドな環境でスポーツをしている」と、冬の施設不足の問題を提起しています。この24年、ここに着手した大人が居なかった事、スポーツに対する情熱や子供達に対する思い、本気度を疑われても仕方ないこの課題放置、ここに昨今の秋田のスポーツ界の衰退の原因があると感じています。
子供たちの健全な心と身体を育む海外のスポーツ文化を秋田にも
今現在、娘が火曜に体操教室、土曜に女子サッカースクールに通っています。同じみん体へ曜日ごとに種目を変えて通っている形です。これは海外のクラブ文化に非常に近いスポーツの形であり、どちらも競技チームではなく、純粋にその種目を楽しむことを目的とした提供だから、余計、海外のそうした文化に近い光景に思えている自分がいます。
拠点があり、選択肢があり、スポーツを楽しむ余白=ゆとりがある。スポーツを通じて人が集まり、子供達はそこで様々な人間関係を通じて社会の疑似体験をしたり、心と身体の調整力を身に付けていきます。我が子の成長を願う親にとって、このような豊かな環境がどんどん増え、発展していって欲しい。
秋田のスポーツ環境の整備を民間のチカラで。
民間によるグラウンドの創出、その1事例目が遂に誕生する事になりました。詳細については次号>>(vol.6)ASPニュース(更新済) にて完全版としてお伝えいたしますが、秋田のスポーツシーンに新たな風が吹き込むことは間違いなく、今後どの ような変化が起こるのか非常に楽しみです。
また、民間グラウンド創出は別案件も同時に交渉を行っており、グラ ウンドで行うスポーツという枠に留まらず、沢山のモノとコトを巻き込んだ一大プロジェクトとして交渉・調整を 行っております。こちらも次号、詳細をお伝えできる様、引き続き努力して参ります。ASPーPLUSにて施設 創出の後押しもお待ちしておりますのでASP会員の皆様のご協力も得ながら実現を目指して進めて参ります。
ASPが目指す理想のスポーツ施設
民間の人工芝グラウンドを!ここで言う民間の定義は 「行政主導ではない」「助成金等の補助が投入されていない」つまり、思いを持つ地域の企業や団体による創出であるという事。次号ASPニュース10月号にて更に掘り下げ、現在進行中の案件について具体的な位置と共にご紹介をしていく予定です。
獲得を目指しているフルサイズ人工芝グラウンド、 ベストは11人制フルサイズピッチですが、それより小さいとしても8人制フルサイズがとれる、大会等にも使用可能な公式ピッチの創出が目標です。そして、重要なのはそこにどんな絵を描くか、ここが一番大切なポイントです。
サッカーはもちろんですが、フットサルやテニスなど分割してのレンタルコートにも対応出来る仕様で、競技ではラグビーや野球・ソフト、グラウンドゴルフなど幅広く使用出来るピッチにし、グラウンドにテントを張ってのキャンプ体験やバーベキュー、イベントなどスポーツに留まらない使用が出来ること。グラウンドの外周はランニングコースを設置し、誰でも自由に利用できる。予約し料金を払って使用する「管理されたゾーン」と、誰もが自由に足を運び身体を動かす事が出来る「フリーエリア」が絶妙なバランスで存在するスポーツエリア。
これは過去、自分が視察した中ではセレッソ大阪のホームスタジアム・長居公園が1つのモデル。J1の試合が開催されるスタジアムの入り口のすぐ道脇で高校の陸上部が短距離のトレーニングをし、公園内のランニングコースには老若男女、溢れんばかりの人たちがジョギングをしていて、その中には目の見えない障がい者の方も沢山、伴走者と走っている。木陰では高齢者の団体が太極拳をしていて、空き広場のようなスペースではサッカースクールが行われている。クレーのグラウンドでは社会人が練習試合で声を上げて盛り上がっており、みんな年齢や競技レベルに応じてそれぞれがそれぞれのスポーツを楽しんでいました。
公園利用者の数が御所野のイオンくらいの人口密度で、健常者だけでなく、障がい者の方も本当に多い。その公園のロケーションが地域の方々の身体を動かす日常を作っていて、あの長居公園の光景や、他にも視察した墨田区の公園、海外で見たスポーツクラブに通う子供たちの日常など、自分が現地で見て肌で感じてきたスポーツ先進県・スポーツ先進国のスポーツ文化が目指すべき到達点です。
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